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控え室に倒れこむ。
衣装を脱いでから床に座るのが、舞台人としての暗黙のルールだが、
スカートを脱ごうとしても、クラクラして立っていられない。
手が震えてフックも外せない。
スカートをはいたまま、床に仰向けに倒れる。
いつもツガン(ジプシー舞踊をロシア語でツガンスキーと言う)の後は
ゼーゼーだが、こんな状態になったのは、初めて。
こんな状態で2部で4曲、踊れるのだろうか・・・。

やばい、やばい、やばい・・・ と思っていたら、

遠くで第2部の準備をしていた同級生が、
「ママ、大丈夫?」と来てくれた。
彼女に「クエン酸ウォーター」を頼み、持ってきてもらう。
落ち着いて、一口。少し復活した・・・。
立ち上がると、スカートを脱がせてくれて、ハンガーにもかけてくれた。

彼女だって、同じ位しんどいはずなのに、その優しさにちょっとグッときた。
私も倒れこんでいる場合じゃない。
気持ちがしゃんとしたせいか、だんだん震えも収まってきた。

結局2部に備えて、水分を十分に取り、チョコを口に入れ、
今度はロマンチック・チュチュのスカートをはく。
2部の最中にキャラクターシューズやスカートの履き替えがあるので、
その準備をしているうちに、時間になった。

私が踊るのは第2部9曲中4曲。

①「コッペリア」より、時の踊り
②「ドン・キホーテ」より、ボレロ(スペイン舞踊)
③「白鳥の湖」より、花嫁のワルツ
④「ロシア舞踊」

**********************

①最初は「時の踊り」。
これはペルミバレエ学校の卒業生は、全員踊らなければならない関門とのこと。
成績がいい子も悪い子も、みんなこれを踊って卒業するらしい。
それだけに、振り付けの時のおばあちゃま先生の気合の入り方は凄かった。
一体、今までに何回踊りなおしたことか・・・。
しかも、クラシックバレエの中でも最古の部類に入る作品のため、
振り付けが古くて、何とも踊りにくい。ついうっかり間違えてしまう。
余計、おばあちゃま先生の逆鱗に触れ、
「イショーラス(もう1回)、イショーラス(もう1回)」。
でも本番はみんな笑顔で伸び伸び踊っていた。
私も楽しんで踊ることが出来た。
おばあちゃま先生の笑顔も見えた。

②すぐに着替えて、次は「ボレロ」。
これは男女ペアの二人の踊り・・・だが、同級生の中に男性はいない。
よって背の高い私は男役。
卒業試験ので踊る出し物が決まり、「誰に踊らせるか」となった時に、
キャラクターの先生が「Сачико(さちこ)」と言ってくれたとのこと。
「もしかして私のスペイン、結構イケてる??」
とほんの少し天狗になってみたが、
振り付けが始まって「サチコ、マンチキ(サチコは男役ね)」と言われた瞬間に、
選ばれた理由を悟った・・・(-_-メ)。
でも、何であれ先生につきっきりで教えて頂けるのは、もの凄く貴重な機会。
振りはもちろん、テンポ、ニュアンス、アクセント、視線、呼吸のタイミング・・・
本当に手取り足取り教えてもらった。
私の癖や欠点もバシバシ指摘された。
最初は自分の実力以上のものを要求されて、どこかであきらめの気持ちもあったが、
最後は真剣な先生に、真剣に答えようとしている自分がいた。

前の演目の「リーズの結婚」から友人の踊りが終了。
一緒に踊る彼女と「よろしくね~」と固い握手を交わし、スタジオに入る。
観客の視線を一身に感じる・・・。落ち着け、落ち着け。
審査員長とおばあちゃま先生が笑顔で私を見て言葉を交わしている。
昨日も、男役の私を見て笑っていた、二人。
もお!!私だって好きで男役やってるんじゃないのよ(;_;)。
審査員席のキャラクターの先生を見る。
先生独特の無表情でうなずいてくれた。よし、行くぞ。

かなりハードで長い踊り。
テンションを上げすぎると、何が何だかわからないうちに終わってしまう。
テンションを下げすぎてもスペイン舞踊の力強さは出てこない。
練習のときは、その時の気分で浮き沈みしていたが、
不思議なことに、本番はステップ一つ一つを床で踏み締めている感触があった。
先生の注意が、その場その場で確実に浮かんで来た。
ピケ~ファイイ~ランベルセ~バドブレ・アントルナン~
アチチュードのピケ2回~シェネ2回~ポーズ、よし決まった。
気のせいか、とても大きな拍手に聞こえた。
レベランスをすると、審査員の先生方が微笑んで下さった。
踊りきった感で満たされて、嬉しかった。
あんなに引きずっていた手足の震えも、不思議と消えていた。

実は私が今日一番気合を入れていた「ボレロ」が終了。
自己評価95点!!!

③再びバレエシューズとチュチュに着替えて、
「白鳥の湖」第3幕より花嫁のワルツ。

これはかつて在籍していたバレエ団の振り付けと全く同じで、
バレエ団でキャストされていたのは、プリマ級のソリスト達。
まさかそんな有り難い踊りを私が踊れるとは・・・。
でも、リハーサルで何回も先輩達の踊りをみていたので、
呼吸やニュアンスが自然によみがえってくる。
私の踊りは一流バレエ団のソリスト達の足元にも及ばないかもしれないが、
ほんの少しでも近づけたらと思って、丁寧に踊った。
でも体力というより、ふくろはぎが物凄いしんどい踊りで、
踊ったあとは、脚全体がパンパンで、つる寸前の状態。

でも泣いても笑ってもあと1曲で終わりだ!!!

④「ロシア舞踊」
「ロシアのバレエ学校なので最後はロシアの踊りで締めます」
と最初に先生がおっしゃっていたが、
締めにふさわしい華やかで盛り上がる踊り。
でも日本人には難しい~~~。
テンポの異常に早いし、脚さばきは細かく独特。
全部の振り付けの中で一番苦労して覚えた作品で、
一番練習期間も長かった。
でも最後の1週間で、踊って踊って踊ってきたせいで、
身体が自然にロシア舞踊の世界になじんでくるまでになった。

第2部のコンサート中、全員で踊るのはこの1曲のみ。
みんなで最後の気合を入れてスタンバイ。
私の後ろには、学校生活の間ずっと行動を共にしてきた親友が並ぶ。
「さっちゃん、本当に最後だね~」と私の手を掴む。
その手を、曲が鳴って出て行く直前まで、お互い離すことが出来なかった。
この時点で、もう涙腺が緩む。
まずい。まだ泣いちゃ駄目!!!満面の笑みで踊る踊りなのだから。
グッとこらえて笑顔でスタート。

半分づつ交互に見せ場のある振り付け。
踊っては次に譲り、踊っては譲り・・・どんどん最後に近づいていく。
終わらないで・・・終わらないで・・・と思いながら踊っていた。
最後に全員で円形のピケ。
これが終わったらもう全てがおしまい。
最後に脚を踏み鳴らして、全員の動きが止まった。
大きな拍手。
と同時に、ピアニストがレベランスの曲を奏でる。
素晴らしいピアノ。
このピアノの音色を聞くのも最後なんだ・・・。
ロシア式のレベランスの間中、
拍手が鳴り止まない。
レベランスが終わって、ピアノの音が止んでも、
鳴り止まない拍手。

終わった・・・終わっちゃった・・・本当に終わっちゃったんだ・・・

体中が喪失感で一杯になった。

ロシアの踊りの最初から最後まで涙腺が緩んでいたままだったのに、
終わってしまったら、泣けなかった。
同級生は全員泣いていた。
でも私は泣けなかった。

2年間好きなことを思いっきりやり、
何も考えずに突っ走ってきたけど、でもやっぱり大変だった。
自分の事、子供の事、家族の事・・・。
もうそんな苦労もしなくていいんだ・・・という安堵感と
青春時代のような輝いた時間を失った喪失感。
踊りきったという満足感。

プラスとマイナスの感情が入り組んでいて、
こんな時に混乱してしまっている自分がいた。
本当は大泣きして、
みんなと抱き合ってこの卒業試験を終えたかった。

・・・でもとにかく、やりきった感で満たされていた。
それだけで、私は幸せだった。

その場にそのまま残り、審査員長にコメントを頂く。
とても良い出来で、とても満足だと言っていた。
どの踊りも全てよかった、と。
「ボレロ」もよかった、とも言っていただいた。
「ロシア」は全員ロシア人のようだったとも。

1週間前、8年生の試験の後に、
「来週の試験に来る先生は、あなた達のことを見るのは初めてです。
その分、感情は入りませんので、覚悟してください」と言われていた。
なのに、そんなコメント言っていただき、お世辞でも嬉しかった。

ペルミバレエ学校日本校教師養成科第1期生。
これをもって、無事卒業。

おばあちゃま先生、カメちゃん先生、ピアニストのリダ。
素晴らしい本物の芸術家との出会いに、感謝!!!
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